税金の納付は国民の義務であり、滞納すると財産の差し押さえなど行政による厳しい対応が行われます。
では、実際に税金を滞納すると、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?
そして、滞納した税金を分割支払いなど、支払い方法を変えることは可能なのでしょうか?
ここでは、税金を滞納すると実際にどうなってしまうのか、滞納した税金の支払い方法の変更について、詳しくご説明します。
税金を滞納するとどうなるのか?
税金を滞納すると、督促状が届くくらいは誰でも知っていると思います。
しかし、督促状が届いても無視し続けると、一体何が起こるのかまではご存じでない方も多いでしょう。
税金を滞納した後、段階的に行われていく行政の対応について、詳しくご紹介します。
督促状や電話、文書による催告が届く
税金の納付期限を1日でも過ぎると、税金の滞納です。
督促状は、納付期限を過ぎてから20日以内に送られます。
督促状が届いても税金の納付がない場合、管轄の自治体から電話や文書による催告が行われます。
税金の納付期限は、税金の種類や管轄の自治体によって異なりますので、納付通知でしっかり確認しておくようにしましょう。
財産調査が行われる
税金滞納者の差し押さえに向けて、財産の調査が行われます。
土地や建物などの不動産、預金額、勤務先の給与明細などが調べられます。
巧妙に隠し財産として保管しているのでもない限り、保有している財産はほとんど調べ上げられてしまうでしょう。
そして、どれくらい差し押さえれば滞納している税金が支払えるのか、行政によって調べられます。
差し押さえや捜査が行われる
財産調査の結果をもとに差し押さえる財産が決まり、差し押さえが始まります。
また、車や調度品などの動産を差し押さえる場合は、自宅の中を捜査されることもあります。
自治体の対応にもよりますが、最短で納付期限から2カ月で差し押さえられる可能性があります。
差押登記、勤務先や金融機関への差押通知
不動産を差し押さえるために、差押登記が行われます。
不動産が抵当に入っていた場合、抵当権者に差押通知書が送付されます。
給与の差し押さえの場合は勤務先に、預金を差し押さえる場合は金融機関に連絡が行きます。
このように、行政による強い権限を行使して差し押さえが行われるため、逃げることはできません。
公売や取り立てにより滞納した税に充当する
財産の差し押さえをしても滞納していた税金の支払いが終わらない場合、インターネットや入札による財産の公売が行われます。
財産を差し押さえは税金の支払いを促すことが目的で行われますが、それでも支払われない場合、差し押さえた財産を実際に売ってしまうのです。
債権などを財産として保有していた場合は、取り立てが行われます。
そして、そのお金で滞納している税金に充当します。
なお、当然のことながら、税金滞納による差し押さえを拒否できる権利はありません。
滞納してしまった税金の支払い方法を変更できる
滞納してしまった税金は後から支払うことができます。
しかし、金額が大きすぎて一括で支払えないから分割払いにしたい、少し支払いを待ってほしいなどという人もいるでしょう。
そこで、滞納してしまった税金の支払い方法の変更について、ご説明します。
所得税を延納する
所得税は毎年3月15日が納付期限と決まっています。
そのため、滞納した場合は、20日が過ぎる前、つまり、3月中、または、4月のはじめに督促状が送られます。
この時、もし所得税を滞納してしまっても、納税額の半分以上を納付すれば、残りの半分は5月末まで待ってもらえ、所得税の延納が可能です。
所得税の延納の手続きは、以下のように行います。
確定申告時に、「確定申告書Bの第1表」の右下にある「延納の届け出」という欄があります。
「延納の届け出」欄にある「申告期限までに納付する金額」に支払額の半分以上の金額を記入します。
そして、「延納届け出額」に延納分の金額を記載するだけです。
最初の納付額を納付すれば、所得税の延納手続きは終了です。
とても簡単な手続きなので、もし、所得税を全部払えないのであれば、手続きしてみてください。
後で督促状が届いたり、財産を差し押さえられたりするよりはよい方法です。
所得税の納税猶予を受ける
所得税には、納税猶予という制度もあります。
これは、1年以内に期限を決めて、分割納付できる仕組みです。
ただし、誰でも申請すれば認められるわけではなく、正当な理由が必要です。
その理由の代表的なものが、以下のとおりです。
・災害や盗難などで納付が困難になった
・納税者や家族が病気やケガなどに見舞われた
・事業を廃業、または、休業した
・事業で著しい損失を被った
・法定申告期限から1年以上経過した後、修正申告などにより納付額が決まった
このように、期限内に納税できない正当な理由がある場合にだけ、猶予が認められます。
もし、該当する理由があるのであれば、申請してみてください。
もちろん、税務署にきちんと届け出をする必要がありますが、認められれば納税の猶予を受けることが可能です。
住民税を分割払いする
住民税は分割払いに変更することが可能です。
住民税は、原則的に6月、8月、10月、1月の月末に4回に分けて納付しますが、手続きをすれば12回払いの分割払いに変更できます。
お住まいの地方自治体の役所で、分割払いの申請をしてみてください。
地方自治体の窓口で分割払いの支払額を計算した後、毎月郵送で納付書が送られてきます。
住民税の納税猶予を受ける
やむを得ない事情がある場合のみ、住民税の納税猶予を受けられます。
猶予期間は2年間ですが、猶予が認められるのは所得税の納税猶予と同じで、納税できない正当な理由がある場合のみです。
管轄の地方自治体によって対応が異なる場合もありますので、一度相談してみてください。
税金を支払う以外に滞納状態から逃れる方法はある?
税金を滞納している人が、税金を支払う以外に滞納している状態から逃れる方法はあるのでしょうか?
結論から言いますと、答えはNOです。
逃れる方法もありますが、非常に難しく長い年月が必要です。
そのため、税金を支払ってしまった方が、手っ取り早いでしょう。
自己破産
よく、自己破産をすると納税の義務がなくなると勘違いをしている人がいますが、そうではありません。
自己破産をしてなかったことにできるのは、自身が持つ債務のみです。
税金の延滞の支払いは「非免責債権」と呼ばれるもので、支払いを放棄できるものではありません。
生活保護
生活保護になると税金の支払いを免れることが可能ではと思うかもしれませんが、これも違います。
生活保護を受ける前から滞納していた税金が、すぐに免除になることはありません。
ただ、生活保護を受けるくらいに困窮している人には、滞納している税金の支払い能力がないと税務署の担当者に判断されることがあります。
その場合、話し合いのもとで滞納処分が停止され、支払い義務がなくなることがまれにあります。
また、国税に関しては、この滞納の停止処分が3年以上続きますと、納付の義務が消滅すると定められています。
そこまで粘れば、滞納処分から逃れられることは可能ですが、なかなか労力がいる大変な方法であることは間違いありません。
まとめ
税金を滞納すると何が起こるのか、行政からどのような処分を受けることになるのかをご説明してきました。
この記事を読むとわかるとおり、粘れば滞納から逃げられるということは、原則ありません。
税務署は、納税の督促、財産調査、財産の差し押さえ、捜査、公売と着々と対応を強めていきます。
自己破産をしても納税の義務からは逃れることができません。
そのため、自分の税金が一体いくらなのか、滞納していないかをきちんと把握しておくようにしましょう。