J-REIT(Jリート)をご存知でしょうか。
法律上は投資信託の一種に数えられるJ-REITは、アメリカで生まれたREITという仕組みの日本版というべきもので、2001年に初めて証券取引所に上場しました。
高利回りで知られ長期的投資に向いているとされるJ-REITですが、2019年現在の状況としては、特に都心オフィスビル市場においては国土交通省による地価調査において改善が見られたこともあり、概ね堅調に底堅く推移すると見られています。
今回は、J-REITの現状と今後の見通しについて解説していきます。
ファンダメンタルズのみならずバリュエーション面での動向も含めて網羅的に解説していきますので、J-REITの将来性をより明確に見出していただければ幸いです。
そもそも「J-REIT」とは
2019年現在の最新の動向について触れる前に、そもそもJーREITとは何かについて簡単に振り返っておきましょう。
J-REITとは、投資信託の不動産投資版である
J-REITとは、複数の投資家から資金を募り、ビルやマンション、商業施設などの複数の不動産を購入し、そこから得られた家賃収入・売買益について投資家に分配する仕組みのことです。
いわゆる投資信託の不動産投資版とも言うべきでしょう。
REIT(Real Estate Investment Trust)という仕組みはそもそもアメリカで生まれました。
ですから、J-REITはこのアメリカで生まれたREITの日本版となっています。
REITは他にも、アジアREIT(シンガポール、香港、マレーシア)やオーストラリアREIT、欧州REITなど世界各地に存在します。
J-REITの銘柄は「不動産投資法人」である
J-REITの特徴として理解しておかないといけないのは、投資対象となるのが「不動産投資法人」という会社形態になっていること。
J-REITに投資する投資家は、J-REITの「投資証券」を購入し、J-REITは投資証券発行によって集めた資金を不動産投資に回して運用します。
またJ-REITは株式会社における社債に当たる投資法人債を発行したり、銀行等の金融機関から融資を受けて資金調達を行ったりする場合もあります。
J-REITは投資家に対して分配金が出やすい金融商品である
一般的な株式会社や有限会社の株式の場合、営業利益がそのまま分配に回るのではなく、税制上の所得に対して係る法人税や、次に行う事業に向けた「内部留保」が差し引かれた金額が分配に回ることになります。
それに対してJ-REITは、「収益の90%を超える額を分配する」といった条件を満たすことで実質的に法人税がかからなくなるというメリットがあるので、「収益が内部留保に回ることも少なくなる=より多くの分配金が受け取れる」という特徴があります。
また、J-REITの多くの銘柄は決算が年2回となっており、順調に運用されていれば年2回分配金を受け取れるメリットもあります。
2019年11月現在のJ-REITの現状
それでは、J-REITの現状を複数の投信会社のレポートを参考に振り返っていきましょう。
2019年10月末までは好調に推移していた
2019年9月から10月にかけて、東証REIT指数は堅調に上昇を続けていました。
特に9月は、国土交通省が19日に発表した2019年の地価調査で市況の改善が見られたことや、10月の追加金融緩和の機体が高まったことを受け、月末値ベースの終値は2007年6月末以来の高水準を記録。
10月上旬までの指数の上昇は目覚ましく、また10月中旬以降も緩やかな上昇を続けており、このまま好調に推移すると見られていました。
その見通し通り、2019年11月初旬の東証REIT指数は、世界的な金利低下を背景に分配金の利回り率が相対的に高くなることによる買い注文が入ったことで、2営業日連続で年初来高値を更新し、好調に推移しているように見えました。
2019年11月初旬から東証REIT指数は続落傾向に
しかしながら、FRB(米連邦準備制度理事会)が10月末に行った金融政策決定会合において金利下げの打ち止めを行う方針を示したことによって、世界的な長期金利の上昇が起こった事が影響し、Jリート市場においても国内金利の上昇が見られたことで利益確定売りが続出、そのまま11月中旬まで続落傾向が続いています。
金利低下が投資家の期待を煽って価格上昇が起こっていたことは、10月のJ-REIT価格の傾向を見ることでも明白となっています。
米国10年債利回りは10月初旬の時点で上昇傾向にあり、東証REIT指数もまた堅調な推移ではあるものの10月に高値を更新するなどし、下落の傾向はありませんでした。
2019年11月以降のJ-REITの見通し :11月中に急落分は取り戻せない?
世界的な金利上昇なども手伝って利確売りによる価格の急落が続いている11月ですが、今後直近の見通しとしては、FRBの施策方針が利下げ休止に固まり当面は利下げが期待できないことから、しばらくは続落が続くと見られます。
下値の目処は8月中旬ごろの水準か
金利上昇を機に下落を続けるJ-REIT価格ですが、当面の下値の目処としては、東証REIT指数としては8月中旬頃と同等になる見通し。
これは米国の長期金利における現状と同じ水準で推移していた時期の東証REIT指数がそのあたりと同等であったことによる分析です。
急落の反動が出始めた11月中旬以降、オフィスビル銘柄を中心に内部成長が期待される
2019年11月中旬の週後半、9月期に好決算となった銘柄を中心に急落の反動が起こり始めました。
もともと東京都心のオフィスビル市場を中心に不動産市況は改善の傾向にあったこともあり、オフィスビルの賃料増額が収益増加に顕著な影響を与えています。
今後のJ-REIT価格については、全般的には底打ちを探りながらも、オフィスビル銘柄を中心に内部成長が期待できるという見方が強いため、当面は底堅い展開になることが見込まれます。
2024年以降のJ-REITの見通し
J-REIT市況は、様々な情報を与えてくれます。
確かにFRBの世界的な金利上昇へのシフトは見通しに厳しさを感じさせる傾向となっていますが、一方で都心の地価は改善傾向にあることからオフィスビル銘柄を中心に急落への反発が出始めているという期待も感じさせます。
それでは、2024年以降のJ-REITの見通しはどうなっていくと見られているのでしょうか。
都心のオフィスビル銘柄の好調は今後も続く見通し
東京都心5区のオフィスビル平均空室率は2019年7月時点で1.71%と、依然として低水準を維持しています。
新規ビルも満室あるいは満室に近い稼働率で竣工していることや、大型テナントの退去も少なかった事が、空室率低下を維持したと見られます。
また、平均賃料に関しても前月比0.68%の上昇が見られ、前年同月比でみると7.24%の上昇となり、2014円1月より67カ月連続上昇を記録しました。
こうした賃料増加や空室率低下を背景に、特に都心を中心とした大都市圏におけるオフィスビル市場はこれからも好調を続けると見られています。
分配金利回りに関しても相対的にみて依然として高い水準をキープし続けています。
2025年までにオフィスビル市場の大量供給は終息か
東京のオフィスビル供給については、2019年こそ過去20年平均とほぼ同等の水準に落ち着いていますが、東京オリンピック開催の年となる2020年以降は再び上昇に転じ、オリンピック効果も手伝って過去20年のなかで3番目に大きい供給量が見込まれています。
こうして2020年に大幅な供給増加が見込まれる東京のオフィスビル市場ですが、大量供給は2020年までに終息し、2021年〜22年の供給量はその反動で大幅に下がると見られています。
2024年は再び上昇に乗ると見られていますが、過去平均並みに落ち着くであろうという見通しです。
2020年竣工のビルに関してもテナントの誘致は順調に進んでおり、当面のオフィスビル市場は引き続き堅調に推移していく事が見込まれています。
賃料収入については緩やかな上昇が続く見通し
現在東京のマンション事情としては、地価の上昇、建築費の上昇によって新規賃貸の供給が抑え気味となっている一方で、東京への人口流入は依然として多く、世帯数が緩やかに増加していることもあり、2011年ころから緩やかな賃料上昇を続けており、また今後も緩やかに上がり続けることが予想されています。
こうした賃料収入の上昇によって投資家への分配金の水準がより一層上がると見られており、期待が寄せられています。
堅調なファンダメンタルズに対し、バリュエーションに過熱感はない
こうして今後も堅調に上昇に乗ると見られるファンダメンタルズに対して、バリュエーション面ではあまり急激な変化はありません。
市場全体のNAV倍率は1倍を超えてはいるものの過去平均と概ね同水準となっていることから、バリュエーション面では落ち着いており、過熱感は見られません。
配当込みの東証REIT指数は依然として高水準を維持
J-REITの大きなメリットとしては、安定した配当収益により底堅く推移している点が挙げられます。
配当を含まない東証REIT指数は下落傾向にあります。
配当込みの東証REIT指数は依然として高水準にあり、J-REITが強いのはやはり配当益である事が直近の動向からも理解できます。
安定的な賃料増加が見込まれる以上、これからも堅調に配当益は拡大していくと見られています。
まとめ
以上、J-REITの仕組みを振り返りつつ、J-REIT市場の現状と今後の見通しについて、網羅的に解説を行いました。
現在は金利下げ止めによる売りが相次ぎ東証REIT指数は緩やかな下落が続くと見られています。
しかし、更に今後、米中貿易摩擦問題に関する会合が進むにつれて、12月発動予定の対中制裁関税が回避されれば、長期金利が上昇すると見られています。
しかしながら、トランプ政権下では緩和的な金融政策が続くと見られており日銀の物価目標達成も見通せない背景から、現在の金利上昇は一時的なものにとどまるという見方が強くなっています。
2024年までの不動産市況の勢いが好調を推移すれば、配当益の拡大も後押しして、大いに将来性が見込まれるでしょう。