バリュー株投資とグロース株投資は投資手法を二分する投資手法です。
バリュー株投資か?
グロース株投資か?
という論争はいつの時代も繰り広げられ結論は未だにでていません。
本日はバリュー株投資とグロース株投資の違いについて説明した後に、どちらの方が魅力的なのか?
という点を偉大な投資家の考察を踏まえながらお伝えしていきたいと思います。
バリュー株とグロース株の違い
まずバリュー株とグロース株の違いについて紐解いていきたいと思います。
バリュー株投資は「今」をみて割安銘柄を探す
バリュー株投資は低PERや低PBRといったような指標が割安な銘柄に投資をする手法と一般的にされていますが、本来のバリュー株投資は異なります。
バリュー株投資はバリュー投資の父であるベンジャミン・グレアムによって開発されました。
ベンジャミン・グレアム氏は現在投資の神様と言われているウォーレンバフェット氏の師匠です。
左がベンジャミン・グレアム氏で右がウォーレンバフェット氏です。
ベンジャミングレアム氏は現在の企業のバランスシートを精査した上で投資銘柄を選別します。
企業が今現在保有している資産から返済の必要がある負債を差し引いた差額が純資産となります。
一言に資産といっても1年以内に現金化できる資産を流動性資産、それ以外の資産を固定資産と分けることができます。流動性資産は現金や有価証券、営業債権、商品などがあります。
この流動性資産から全負債を差し引いたものを正味流動資産と呼びます。
この流動性資産の2/3が企業の現在の時価である時価総額を上回っている銘柄を投資対象銘柄としてピックアップします。
つまり、建物や土地や設備やのれんといった資産を含めない換金性の高い流動資産から全ての負債を支払った保守的な純資産の更に2/3が時価総額より大きな銘柄なので圧倒的に割安なお得銘柄ということになります。大型銘柄では、なかなかこの銘柄を探し出すことはできません。
しかし、日本は時価総額に比して上場企業数が多いという特徴があります。
日本の8倍の規模がある米国株の上場企業数は約5000社なのに、日本は上場企業数が3500社も存在しているのです。
3500社も証券会社のアナリストが分析をできるわけもなく、彼らが分析するのは機関投資家の対象となる大型銘柄のみとなります。
結果的に通常では有り得ないレベルのグレアムの基準を満たすバリュー株が多く存在しているのです。
改良型のグレアム流バリュー株投資
グレアム流の基準で用いた流動性資産には商品が含まれています。
商品は売れることで初めて現金化できるのですが、場合によっては売れなかったり価値が陳腐化して半減している可能性も十分にあります。
そこで、流動性資産から商品をの除いた現金、有価証券、営業債権を現金性資産として算定する方法もあります。
現金性資産から総負債をのぞいて残った保守的純資産が時価総額より大きい銘柄を買うという手法を取り入れている投資家もでてきています。
筆者が投資しているBMキャピタルも、上記の改良版バリュー株投資で安定した成績をあげているます。以下もご覧いただければと思います。
→ 「ネットネット株」の弱点をアクティビスト戦略で補完!BMキャピタルが行う本格的なバリュー株投資戦略とは?
グロース株投資は「将来」を含めて割安銘柄を探す
先ほどのバリュー株は現在のバランスシートから考えて割安な銘柄を探す方法であるとお伝えしました。
グロース株は将来の利益の伸びまで加味して現在の株価が割安と考える考える場合に投資する手法です。
例えば、割安度を測る指標としてPERがあります。PERは簡単にいうと、企業の利益何年分で株価の元手が回収できるか?という数値です。
1株あたり純利益であるEPSが100円の企業の株価が1000円であればPERは10倍ということですね。
一般的に成長力が低い公益セクター等は低PERの株価で取引されており、ハイテクセクター等の成長力高い企業は高PERで取引されています。
グロース株はたとえ現在の株価が低いPERでなかったとしても、今後の成長を前提にすると現在の株価で考える将来予想PERは割安であると考えて投資を実行します。
株価が2000円で今年EPSが100円の場合はPERは20倍です。しかし、2年後に収益が2倍に上がると考えるのであれば2年後ベースの予想PERは10倍となります。
予想PERが10倍であれば現時点の株価2000円は割安ということになります。
バリュー株とグロース株のリターンを比較
一番重要なのはリターンの違いではないでしょうか。
以下はデータが取れてなおかつ世界で最も歴史と規模のある米国の1972年からのデータを元に確認していきたいと思います。
以下は1972年からのバリュー株とグロース株のチャートの比較です。若干ですがバリュー株投資が成績を凌駕しています。
年率リターン | リスク | シャープレシオ | 最大損失 | |
バリュー株 | 11.09% | 15.05% | 0.48 | -35.97% |
グロース株 | 10.01% | 17.16% | 0.39 | -38.32% |
値動きの激しさを示すリスクもグロース株の方が大きく、過去約50年だとバリュー株に軍配があがります。
よく見ると局所的には赤のグロース株の方が上昇幅が急になっている局面が何度も見られますが、長期的にはバリュー株が優位となっているのです。
わかりやすく年次毎の比較を行なったものが以下となります。
特徴的なこととしてグロース株は頻繁に大きなドローダウンがあることが見て取れます。
右端をご覧いただければ分かる通り直近2022年もグロース株は30%近い下落を被っていますからね。
下落を免れながら安定したリターンをだしているのはバリュー株ということになります。
因みに更に期間を長くして1932年からでみてもバリュー株の方が優位であることには変わりはありません。
むしろ直近のグロース株が強い局面というのが異常事態だったということが見て取れます
バリュー株とグロース株のどちらが資産形成に適している?
ここまでみて結局、どちらが資産形成に適しているのか?
と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。バリュー株が強い時もあればグロース株が強い時もあるという結果になりました。
しかし、先ほどのデータはあくまでバリュー株を低PERや低PBRで分類した場合のデータです。
最初にお伝えした通り、本格的なバリュー株投資を実践すれば更にリターンとリスクは改善します。
長期間の資産運用において最も重要なことは資産を下落させずにコツコツと増やしていくことです。
1000万円が50%の大幅下落をこうむり500万円になってしまったら、元に戻すのに+100%のリターンが必要となりますからね。
グロース株は調子が良い時は勢いよく上昇していきますが、一度下落すると大幅に下落してしまう可能性があるのです。
一方、伝統的なバランスシートを精査するバリュー株投資では現状バーゲンセールで販売されている銘柄を購入します。
例えるならば今すぐ換金したら10万円の価値がある時計が、5万円で購入するようなものです。理論上下落する余地がほとんどないのです。
そして株価は長期的には本質的にあるべき価値の収斂していくという性質を持っています。不当に低く評価されている株価もいつか上昇して大きなリターンをもたらすのです。
筆者が投資しているファンドでは大量に条件を満たす銘柄を購入して、経営陣に働きかけ経営改善や自社株買や資産の売却を促しスポットライトをあてて株価を引き上げる施策もとってくれます。
結果的に運用以来一度も下落することなく年率10% 程度のリターンを叩き出してくれています。以下、ランキングでもお伝えしていますので参考にしていただければと思います。