世界には様々なヘッジファンドが存在しています。
中でもジェームズ・シモンズが運営する「ルネッサンス・テクノロジー」は高度な数理モデルを使って、世界でもトップクラスの高いリターンを叩き出しています。
以下は米国株の市場平均であるS&P500指数と、ルネッサンスが運用しているファンド「メダリオン」のリターンの比較です。
S&P500指数がマイナスとなっているリーマンショックやITバブル崩壊の時もプラスのリターンを叩き出していますね。
本日は、ファンドマネージャーのジェームズ・シモンズとはどのような人物なのか?
シモンズが運営するルネッサンステクノロジーはどような運用手法を取っているのか?
という点についてお伝えしていきたいと思います。
ジェームズ・シモンズとは?
ブリッジウォーターアソシエイツというヘッジファンドを運営するレイ・ダリオ氏が資産運用を専門としてキャリアを積んできたのに対して、シモンズ氏は数奇な人生を送っています。
シモンズは2020年時点で純資産は約2.2兆円とフォーブスの富豪ランキンでで36位となっています。
数学者としてのキャリア
彼は1938年にユダヤ人家庭に生まれました。ユダヤ人といえば、藤田田氏が執筆した「ユダヤの商法」でも知られる通り富裕層を多く生み出すことで有名な民族です。
彼の前半生は資産運用や投資とは関係ない、数学者としての人生を歩むところから始まります。彼は20歳でマサチューセッツ工科大学で学士を23歳でカリフォルニア大学バークレー校で博士号を飛び級で取得しています。
これは本当に異常なことです。日本の東大のような一流校で学士を取るのは最短でも22歳です。そこから最短で修士を取得しても24歳、博士ともなると27歳から28歳での取得となります。
23歳で博士号を取ることは日本では不可能ですし、飛び級があったとして通常達成するのは困難を極めます。所謂天才というにふさわしい才覚を持っていたということですね。
その後、Shing-Shen Chernとの研究でチャーン・サイモンズ定理を発見し、1976年にはオズワルト・ヴェブレン幾何学賞も受賞しています。
正直天才です。その後、20台後半から30台前半でマサチューセッツ工科大学やハーバード大で数学教授をつとめています。
20台後半で一流大学の教授になるなんて話は東大を卒業した私も日本では聞いたことはありません。異例中の異例といえるでしょう。彼は前半生をまず数学者として成功を収めているのです。
数学者として輝かしい実績をあげながらシモンズはNSAの要請を受けて1964年から1968年の20代後半という若さで暗号解読に携わっていました。国家としても彼の才能を買っていたということですね。
ルネッサンステクノロジーを運営
1978年に40歳でシモンズはMomentricsという投資会社を立ち上げました。このMomentricsが後に巨大ヘッジファンドであるルネッサンス・テクノロジーへと発展します。
きっかけはユダヤ人の父が商売で成功して大金を得たことで、父の資産を運用して増やそうと持ちかけたこととしています。
その後、数年は数学的な理論を用いて金融市場に対する法則を見極めようと努力を行い様々な専門家(後述)とともに金融市場を解析しつづけました。
最初は上手くいかず資金を失うこともあったそうですが、長年の努力が身を結んで旗艦ファンドであるメダリオンは先ほどのように高いリターンを叩き出しています。
1998年時点では2000万ドルであった資金は1993年には3倍以上の6600万ドルへと成長し、2000年には24億ドル、2010年には100億ドルへと急成長を遂げていきました。
メダリオンの平均年率リターンは60%を超えており、ウォーレンバフェットの20%を大きく上回った成績をだしいてます。
ITバブルやリーマンショックでも50%以上のリターンを叩き出し市場を驚かせました。それではシモンズが運営しているルネッサンステクノロジーの運用手法についてお伝えしていきたいと思います。
ルネッサンステクノロジーズはどのようなヘッジファンド?
レイダリオのブリッジウォーターアソシエイツでは一流大学のMBAを取得したような所謂資産運用に親和性の高いエリートばかりを採用しています。
しかし、ルネッサンステクノロジーは様々な分野の専門家はチームに招き入れています。例えば以下のような人たちです。
- 数学
- コンピューターサイエンス
- ゲーム理論
- 統計学者
- 信号解析
- 天体物理学者
- 天候学者
様々な分野の専門家が金融市場から法則性やシグナルを読み取ってトレードに活かしています。興味深いのが一見関係のない天体物理学者や天候学者もチームに率いていることですね。
結果的にメダリオンファンドは高い成績を出し続けています。2011年から2018年においても手数料前で75%、手数料後で40%という驚異的な年率リターンをだしています。
ヘッジファンドは成功報酬型の手数料体系ですので、利益も凄まじい分、手数料も高くなりシモンズを世界有数の富豪へと押し上げています。
ヘッジファンドの成功報酬型手数料体系を投資信託と比較しながらわかりやすく解説する!ハイウォーターマークとは?
ルネッサンスでは株式を買いから入るロング戦略だけであんく、売から入るショート戦略も組み合わせてリターン獲得を狙っていきます。
何十万から何百万という取引を行い勝率は50%に近いながらも、おそらく損小利大で利益を伸ばしているのです。
ただ、最新の情報ではコロナショックでは大幅マイナスの成績となっており苦境に喘いでいることが読み取れます。
数学者ジム・サイモンズ氏が創業したヘッジファンド、ルネサンス・テクノロジーズの米上場株のみ対象に取引するクオンツ戦略ヘッジファンドの今年これまでの運用成績は、マイナス24%となった。3月初めの3週間で大きく悪化した。
ブルームバーグが確認した投資家向け資料によると、「ルネサンス・インスティチューショナル・エクイティーズ・ファンド」は3月1-20日の成績がマイナス約18%。同ファンドの戦略は、コンピューター主導モデルが上昇を見込む銘柄にバイアスを掛けている。
ただ米S&P500種株価指数は、3月は20日までに22%、年初からは28%それぞれ下落しており、同ファンドを上回る落ち込みとなっている。
参照:Bloomberg
ルネッサンステクノロジーズに個人投資家は投資できる?
先ほどからお伝えしているメダリオンは現在非公開のファンドとなっており一般投資家はおろか機関投資家も購入することはできません。
今まで貢献してくれた従業員限定のファンドとなっているのです。
ルネッサンスは以下のようなファンドを運営していますが、機関投資家向けとなっておりなかなか個人投資家には門戸が開かれていません。
RIEF:ルネッサンス機関投資家向け株式ファンド
RIDGE:リネッサンス機関投資家向け
RISA:ルネッサンス機関投資家向け多様化アルファ
仮に門戸が開かれたとしても5億円〜10億円規模でないと門前払いを食らうので常識的に個人がルネッサンスの運用ファンドに投資することは諦めた方がよいでしょう。
個人投資家が投資できるヘッジファンドとは?
ルネッサンステクノロジーやブリッジウォーターのような米国の巨大ヘッジファンドに日本の個人投資家が投資することは現実的ではありません。
しかし、日本にも個人投資家にも投資ができる素晴らしいヘッジファンドは存在しています。ルネッサンスが損失をだしたコロナショックでもしっかり損失を出さずに運用しているファンドもあるのです。